代表 市田友之インタビュー

sole wood wroducts代表 市田 友之

sole wood wroducts代表 市田 友之


家具職人のおもしろさはゼロから物を作り出すこと


祖父も父も大工という環境で育ってきたので、小さなときから「木」がずっと身近にありました。ですので、将来は大工になるのかな?となんとなく考えていましたが、学生時代に家具のおもしろさに目覚めました。デザインの段階では図面という平面のものが、自分の手で立体的になり、この世に存在していく。ゼロからものを生み出し、それが何十年、もしかしたら百年後も残っていく仕事であることに惹かれ、家具職人の道を選びました。

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三越家具製作所で技術を極める


学校卒業後は、創業110年の老舗であり、日本の高級洋家具製造の発祥といわれる「三越家具製作所」に就職しました。入社後は、国会議事堂、最高裁判所や皇室関係、ハイブランドの什器や家具製作など、さまざまな仕事をさせていただきました。高い技術を持ったプロフェッショナル集団の中での仕事は、技術麺はもちろん、精神面での鍛錬にもなりました。また、経験を積むうちにお客様からご指名をいただく機会も増えていきました。それはすごく嬉しく、自信に繋がりました。

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自分らしく働くために東京から大川へ


東京での仕事は、繁忙期になると子どもが起きる前に家を出て、寝てから帰宅するような生活が続いていました。家族と一緒に過ごす時間はほとんどなく、子どもの成長を見ることもできない。そんな時に勤務先の制度や職場環境が大きく変わることになり、「仕事人生の折り返し地点」として、独立を考えるようになりました。

その気持ちが決定的になったのが2011年3月11日に起きた東日本大震災でした。スーパーやコンビニの棚からあっという間に品物が消えて、水や食料を手に入れるのに大変で。子どもたちへの健康被害の不安などもあり、移住を真剣に考えるようになりました。家族を大切にしながら、自分らしく働きたい。そう思って大川へ移住することに決めました。

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良質な材料が揃う家具のまち大川


木工職人として感じる大川の魅力は、なんといっても良質の木材がすぐに揃うこと。朝、電話で注文しても、午前中にはすべて届きますからね。東京ではありえないことです。

また、通常伐採された木材は、製材所に運ばれるんですが、その輸送距離が長いほど温度変化が原因で木材が乾燥してしまって、加工するときに狂いが生じてしまいます。でも、同じ福岡県内で伐採された木材ならそのリスクも最小限。木材の質がいいのも大きなポイントですね。

それになんといっても大川の魅力は、「人たちの温かさ」。地元のみなさんが、子連れにも優しくて、温かい人間関係の中で、子どもたちものびのび育っています。


sole wood productsの由来は子どもたちが好きな絵本から


屋号であるSole wood productsの由来をよく聞かれますが、子どもが大好きな絵本のキャラクターから取りました。絵本作家・島田ゆかさんの絵本『バムとケロ』シリーズの『バムとケロのもりのこや』に出てくる、大工仕事が得意なソレノドンのソレちゃんが由来なんです。ソレちゃんは、森のみんなが快適に過ごせるように、黙々と働いて、律儀で寡黙。自分もそんな存在になりたいと思い、「ソレ」を屋号にしました。

工場の近くに「ベタベタくっぞこ」という妖怪が出ると言われている、小さな通りがあるんです。ベタベタくっぞこ=靴底=soleというつながりもあり、地域との密着感も出て非常に嬉しく思っています。

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お客様の声に耳を傾けながら世界に一つの家具を作りたい


うちの特徴は、お客様のご要望をうかがって、デザインをおこして、木取りから完成までのすべての工程をひとりで行っているところだと思います。また、昔ながらの継ぎ手の技術「江戸指物師」の技法を用いて家具制作をしています。釘は一切使用せず、伝統技術の「ほぞ組」を駆使して作る家具は、非常に丈夫で、長年愛用していただくことができます。

他にも、ひとつひとつ異なる木目をそろえたり、木の模様を活かしたり、木の持つ表情を大切にすることも忘れません。他の工房に依頼をしたけど、技術的に無理だと断られたものでも、「ここなら作ってくれるから」とオーダーをいただくこともよくあります。

また、大量生産で作る家具のように壊れたら捨てるのではなくて、傷がついたり、壊れたら修理をしながら長く使っていただきたいという思いから、家具の修理にも対応しています。お客様とは家具を通じて、一生のお付き合いをしてけたらすごく幸せなことだと思っています。


想像する楽しさ喜んでいただける嬉しさ


家具を作る面白さは、なんといっても「創造する」楽しさに尽きると思います。子どもの頃、父親が図面を見ながら木材を使って、カタチにしていくのをワクワクしながら見ていたのが家具職人としての原点だと思います。自分の頭の中でイメージしたものを、イチから作りだすことは、難しさもありますが、その難しささえ“面白い”って感じるんです。。

そして、自分が作ったものをお客様が喜んで下さるということ。そして、大切に使っていただきながら、ずっと残っていくものを作っている、その「重み」が制作意欲を沸き立てます。

先日、同業者の方からコートハンガーの依頼がありました。「これと同じコートハンガーは、自分で作りたくても作れないから」といってくださって驚きました。自分にしか作れないものを作れているのかな?と思うと、正直嬉しかったですね。

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日本の伝統技術を次世代へとつないでいきたい


最近、これまでに自分が身に付けてきた経験や技術を「若い世代に伝えていきたい」と思いが強くなってきています。日本の伝統的な家具製作の技術はとても素晴らしいですし、新しいものを生み出す可能性も大きいと思います。ですので、ぜひ若い世代にも受け継いで欲しい。

その活動のひとつとして、現在、福岡県浮羽工業高校の木工の授業を担当しています。2018年に開催された「高校生ものづくりコンテスト」に出場する生徒の指導を依頼されたことが。「ものづくりコンテスト」の木材加工部門では、家具をイチから製作してその完成度を競います。初めて挑戦した年は2位と3位に入賞、2019年には優勝と準優勝という結果でした。自分のこと以上に嬉しかったですね。

生徒たちには自分で加工する楽しさを知ってもらいたいんです。授業では、最初は「え、こんなの作るの無理」って面倒くさそうにしている生徒も、作りはじめると楽しくなってくるんでしょうね。そのうちに「もっとこうしたい」って相談しにくる子もいて、かわいいんですよ。大川で「育てる喜び」を感じています。

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Soleのものづくりを世界中に広げていきたい


今後は、家具に限らず、木工作家として海外からも注目されるような作品作りにチャレンジして、「日本の、そしてSoleのものづくり」を発信していきたいと思っています。

一目見て、これは「Sole」の作品だなってわかるものを作りたいんです。自分がイメージしたものをどれだけ世に出せるのか、自分への挑戦ですね。

インスタグラムに掲載している作品の数々に海外の方からの「いいね」やコメントも増えてきています。SNSを通して、海外の方に「Sole」のモノづくりをもっと知っていただけると思うと、ワクワクしますね。

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読売新聞に掲載

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